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第468号「OTTがもたらす『バイパスィング・ケーブル』(迂回)」
[2015.06.08号]
【よいどれコラム】
5月28日は、NHKの技研公開に行ってきた。午前中、銀行に行って、昼を簡単に済ませ、1時頃に家を出て、東京駅から千代田線に乗り換え、1時間半。千葉、東京、神奈川の3県に跨がる旅だ。陽気はすっかり夏。大勢の人がもうすっかり半袖だが、電車の中のクーラーも効き始めているので、上着を持っていないと肌寒い。
成城学園前から、渋谷行きのバスは、技研に行く人で、混んでいた。NHK技研前で約7割の人が降り、技研の入り口へと足を運ぶ。
プレスの受付を済ませて、順路に沿って歩き始めると、そこはもう8Kワールドだった。カメラ、圧縮、伝送、受信、他にもいっぱい8KTV放送を実現する要素はあるだろうが、そのすべてが揃っている、という印象だ。あえていえば、十分にないのは、8Kコンテンツくらいだろうか。
衛星受信、ケーブルテレビによる伝送、次世代地上放送のシステムが展示されており、NHKの8Kの本気度がひしひしと伝わってくる。
ディスプレイの前は、大勢の人で混んでいて、機器の接写はできず、遠景しか撮れなかった。人々の関心の高さが非常に大きいという雰囲気が伝われば良しとすることにした。
先日、INTX2015に行ったばかりだし、NABは、4Kやストリーミングが中心になっていたという話を聞いているので、日本は、まったく独自路線を歩んでいる、という印象を強く持った。決して右よりではないが、むしろその姿に、かすかな誇りさえ覚えた。
「こんなにも近づいてきている」とは思わなかった。2020年まで、あと5年なんていってられない。2020年は、東京オリンピック・パラリンピックに限らず、国家的レベルで、地域的レベルで、企業、そして個々人においても、あるひとつのメルクマールになっている。
何事にも、もう明日にもやってくる、という覚悟で事にあたらないといけないのだろうと思った。
帰りに、技研の入り口の写真をあらためて撮ろうと思ったら、8Kの衛星放送を受信しているパラボラアンテナがあった。非常に小さい。ここで受信して、内部で見せている。
30数年前、BS放送が始まった頃からの大きな進歩を感じた。だが、その進歩も、ひとつ一つの技術の積み重ねの賜である。
成城学園前に戻り、浅草演芸ホールに向かうことにした。5月28日は、会社の設立記念日なので、ちょっと息抜きである。
表参道で、銀座線に乗り換え、浅草へ。松屋の地下で、ビール、酎ハイ、ハイボールとつまみを買って、仲見世通りを西に向かう。浅草は、いつ来ても、やはり独特な匂いがある。
切符売り場で、大人1枚2,800円の切符を2枚買って、中に入ると、入り口のソファーにバスガイドが3人座って、話し込んでいた。
扉を開けると、中はけっこうお客さんが入っていた。木久蔵師匠の話が終わったところで、ちょうど噺の切れ目だった。舞台の左そでの前から2列目の席に座った。
色ものの小菊師匠の三味線漫談が始まった。舞台に向かって、筆者の右斜め前には、一番前の列に、若い女性の二人連れが座っていた。左側の女性が、非常によく笑う。
客席には、150人ほどのお客さんがいるが、ひとりで80人分くらいは笑っている。筆者も負けじと、30人分くらいは笑うが、彼女の甲高い笑い声は、客席の高い天井にも響いて、とてもかなうものではない。
川柳川柳(かわやなぎ・せんりゅう)師匠も、良く笑う彼女たちに視線を落とし、他の高齢者が座る席の方に向かって、「こっちは反応が遅い!」とあいかわらずの口調で、笑いを取ろうとする。いわゆる、(客席を)「あっためる」というやつだ。
川柳師匠が、「みなさん、読売で来たんでしょ」といったので、さっきのバスガイドと話がつながった。読売新聞の読者サービスで、バスツアーで寄席を見に来た人たちだったのだ。客席がざわざわっとしたので、何かと思って振り返ると、ちょうど18時、読売の人たちが帰るようだった。そして、客席には、50人ほどのお客さんが残った。
仲入りが19時少し前。焼き鳥を食べていると、再び後ろの方で、ざわざわっとするので、振り返ると、赤い帽子をかぶった150人くらいの小学生が、入ってきて、席に座っているところだった。
会場で、ゴミ集めに回っている支配人に、「あれ、何ですか?」と尋ねると、「修学旅行」だという。浅草の辺りのホテルに泊まって、食事を済ませ、夜の「社会科見学」に出てきたのだろう。
困ったのが、幕が上がって出てきた「天どん」師匠である。仲入り後の最初の高座を「くいつき」といって、お客さんの視線を舞台に取り戻さなくてはならない。しかし、会場はいっぱいだが、そのうちの75%は、赤い帽子をかぶった小学生の男女である。しかも、多くの小学生が、寄席に来たのは初めてだろうから、客席は、落ち着かないままである。
「これをどうやって鎮めろっ!というのか」という表情で、何事かつぶやいていた天どん師匠。「君たち、みんな帽子をかぶったままなんだね」と話しかけると、(先生の指示があったのかもしれないが)一斉に帽子を脱いだ。「あっ、帽子を脱ぐんだね。『脱げ!』といったつもりじゃないんだけど」というと、今度は、再び、赤い帽子をかぶる。「あっ、またかぶったね」というと、再び脱ぐ。さらに、追い打ちをかけるように、「白い帽子はないのかな」というと、客席の一部の30人くらいの小学生が、赤い帽子を反対にして、白い帽子をかぶってみせた。
「あっ、白い帽子もあるんだね」といい、「脱いでもいいんだよ」といったあたりで、小学生と波調が取れたようで、『つる』を演じ始めた。
その後、出てきた「丈二」師匠も、大勢の小学生に圧倒されながら、枕を話している間に、ネタを探して、『目薬』を演じた。
「彦いち」師匠も、舞台のそでからでは客席が全部見渡せないので、こんなに小学生がいるとは思わなかった、とネタ探しに苦慮して、『反対俥(はんたいぐるま)』を演じた。
そして、20時に。小学生は、帰っていった。
その後、出てきた落語家は、子供がいなくて良かったというネタを演じた。
2020年東京オリンピック・パラリンピック、8K世代の小学生には、浅草演芸ホールの落語は、どのような印象として残ったのだろうか。
将来の落語家が出てこないとも限らない。
落語のネタは、いくつか教科書にも載っているし。(い)
【目次】
◆1.『INTX2015と最新アメリカCATV事情視察ツアー』レポート(その2-INTX2015)
◆2.《フォトレポート》NHK技研公開2015
◆3.九州テレ・コミュニケーションズが第2コミュニティチャンネルを活用して
新サービス開始
-マンションなどの集合住宅の回覧板情報をデータ放送で提供
◆4.脳トレ界の大御所 多湖輝氏監修の「なぞなぞ」を毎日配信
データ放送向けポイント加算機能付オリジナルコンテンツを発売
◆5.プラットイーズが、番組情報をデータ放送で提供する
番組レコメンドサービス「OSUSU・me (おすすみー)」を提供開始
◆6.緊急情報を“声”でおしらせ!
ケーブルスマートTV“cottio”(コティオ)でプッシュ通知システム 提供開始
◆7.イッツコムとニフティ、スマートホーム事業において、
業務提携に関する基本合意書を締結
◆8.無料利用券つき割引優待サービス「モラエル」、アクトビラ利用者に向けて
提供開始
-CATV 局向け IP-VOD サービス『ケーブルアクトビラ』のオプションサービス
としても提供
◆9.J:COMが5月29日より4K商用サービスを開始
新セットトップボックスで4Kコンテンツが視聴可能に
◆10.障がい者の方々の雇用促進を目的とした新会社
「株式会社ジェイコムハート」を6月に設立
◆11.J:COM、コミュニティチャンネルの看板番組『デイリーニュース』
6月より関東各地に大幅拡大し、視聴世帯も倍増!
◆12.見たい番組が、もっと便利に探せる!
「Smart J:COM Box」の電子番組表がVODと連携
~5月29日より検索結果にVODコンテンツも表示・そのまま視聴も~
◆13.DXアンテナ、45形BS・110度CSアンテナおよび
45形BS・110度CSアンテナセット(2機種)の合計3機種を6月1日発売
◆14.大分ケーブルテレコムと住友電工、10G-EPON システムの実証実験を開始
◆15.第27回ケーブルテレビ功労者表彰、受賞者決定
◆16.平成27年(第11回)「一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟 功労者表彰」
受賞者決定
◆17.猫ひろしが<旅チャンネル 猫大使>として応援!
旅先で暮らす猫を紹介する番組『旅猫ロマン』 旅チャンネル放送!
◆18.NHK放送研修センター《ケーブルテレビ研修》案内
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